塾長の体験談

デンタルコムスンの東京営業所で所長をしていたころの話です。

日報をチェックをしていると、一人の患者様の進捗状況で府に落ちない内容が記載されていました。訪問スタッフに確認すると、入歯の作製に4ヶ月もかかっており、未だ完成していない、ということでした。早速、ご家族へ状況をうかがうと、「在宅介護に限界を感じるので、施設に入所させたい。」という状況を告白されました。その数か月、ろくに食事をとることが出来ず、体力が低下してしまった結果です。

早速、提携歯科医院の中で高い技術を持つ先生に連絡し、翌日の朝一番に、今の入歯で食事が出来るようにして欲しいと、無理な依頼をしました。先生は、状況を察してくださり、快く了承してくださいました。

ご家族にも了解を頂き、翌朝8時に患者様宅を訪問し、入歯の修理、調整を開始しました。
そして、午前10時には、噛むことが出来る入歯になっていました。

しかしながら、数日後、ご家族からの患者様の訃報の連絡がありました。

私も密葬に参列させていただき、故人を棺桶に入れるという大役をいただきましたが、故人を持ち上げた際の身体の軽さに、いろんな思いが巡り、涙が止まりませんでした。

葬儀の後、ご家族から卓上カレンダーを手渡されました。
そこには、朝一番でお伺いした日に、「食べられる、うれしい」と書かれてありました。

悔しさで涙が止まりませんでした。

もう少し早く気付いていれば、状況が少しは変わっていたかもしれない・・・・。
もっと早い時期に食べることが出来るよう、配慮するべきだったと後悔するばかりでした。

もっと真剣に一人一人に関わっていこう、こんな悔しい亡くし方をしてはいけないと、心に誓った出来事のひとつです。

閉じる